インドネシアから介護士候補生を受け入れ

宝塚ちどりの取り組み

2008年度から始まったEPA(二国間経済連携協定)に基づく外国人介護士候補生の受け入れ。インドネシア・フィリピンに加え、今年度からベトナムの候補生も来日します。この制度を通じて13年度までに1000人以上が来日、受け入れ施設は375施設に上っています※1。こうした中、活動施設の一つ、宝塚ちどり(入居定員100人、個室ユニット型)でもインドネシアの候補生が働いています。09年度・10年度・13年度と2人ずつ計6人を受け入れ、09年度組の2人は12年度に介護福祉士の国家試験に合格しました。取り組み内容を伺うとともに、制度の課題について考えました。

4年間の滞在で「介護福祉士」取得めざす

「おはようございます。身体の具合どうですか」。利用者にやさしく声をかけるルキナールさん(35)。13年3月、介護福祉士の資格を取得。今ではパソコンで介護記録を入力し夜勤もこなします。母国では看護師として病院で勤務。「施設で介護も学びたかった。憧れの国で勉強したかったので家族や彼氏を説き伏せて日本へ来ました」

EPAに基づくこの制度で外国人候補生が日本に滞在できるのは4年。この間に日本語を習い、介護施設で働きながら「介護福祉士」取得をめざします。給与は日本の介護職と同程度。ただし、介護福祉士になるには実務経験が3年以上必要なため、滞在期間中の受験機会は事実上1回のみ。合格すれば日本で働き続けられますが、不合格の場合は帰国することに。「厳しすぎる」という批判を受け、政府は11年度組までは滞在を1年猶予し、再受験できるようにしました※2

利用者にも人気真摯な姿勢が施設にもプラスに

現在のインドネシア介護士候補生研修の流れ

「2025年には介護職が100万人不足すると言われている中、介護現場で外国人を雇用する可能性は今後非常に高くなる。近い将来を見据え、早い段階から良好な受け入れ態勢を整備していくことが優秀な人材確保につながると考えました。また、異文化を理解し国際交流を進めることは、違いを認め他人を思いやるという施設風土にも良い影響を与えると思っています」

笹尾高弘副施設長は受け入れの理由をこう語ります。

候補生はユニットに配属。マンツーマン指導により介護方法を学んでいきます。

「介護は半年ぐらいで習得できました。新人職員の中でも習熟度はトップレベル。丁寧に接してくれるので利用者からも喜ばれています」と話すのは、研修支援者として日本語の勉強や生活全般のサポートにあたっている有田佳代さん(施設ケアマネ・生活相談員)。

苦労したのはやはり日本語。週3日、1回2時間を学習時間にあて、小学1年生のドリルや日本語研修の教材を使って覚えることに取り組みました。インドネシアのことをよく知っている地域のボランティアにも指導を依頼しました。

施設では生活習慣や文化の違いにも配慮。イスラム教徒には昼休みにお祈りができる場所を確保したり、キリスト教徒には日曜日に教会へ行けるようシフトを考慮したり…。年に1〜2週間、一時帰国できる機会も設けました。

10年度組の2人は今年国家試験に臨みましたが残念ながら不合格。1人は家族の要望で帰国しましたが、もう1人は1年の滞在延長が認められ、来春の合格をめざします。

「候補生たちの明るく前向きに努力を重ねる姿勢に多くの職員が刺激を受け、ケアの質が向上した」「きちんと介護ができるのでユニットの職員からも頼りにされている」と予想以上に効果は大きい様子。今年度は系列の中山ちどりでも受け入れを予定しています。

再受験・再入国にも対応し働ける場づくり拡大を

「介護福祉士」を取得したジュリアティさんとルキナールさん。

宝塚ちどりのように、受け入れ施設にとって得るものも大きいこの制度。一方で、マッチング手数料・滞在管理費・日本語研修負担金・住居の確保など、施設には1人当たり70万円以上の負担がかかります(兵庫県から学習費として1人23万5000円は補助)。また有田さんのようにきめ細かなサポートを行う研修支援者や、受け入れに当たって現地へ出向いて面接を行うなど取り組み全体を統括する研修責任者の配置も不可欠。人的・経済的に余裕がないと受け入れは難しいのが現状です※3

EPAは「経済協力の強化」を主目的とするため、「人手不足への対応」という介護現場の意向を必ずしも反映したものではない点も課題です。「受験は1回のみ、不合格者は帰国」という条件は、受験生にとっても施設にとっても重圧。また、たとえ合格しても家庭の事情などで帰国するケースもあるでしょう。人材の確保・定着を図るには、再受験への挑戦や再入国について、当事者と施設で柔軟に調整できるよう弾力的な対応が望まれます※4

少子高齢化が進むなか、今後拡大が予想される外国人介護士の受け入れ。候補生や受け入れ施設の声に耳を傾け、志ある外国の人々が働き続けられる枠組みづくりとさらなる工夫が求められます。

※1…国際厚生事業団調べ
※2…国際厚生事業団
※3…受け入れ施設には「定員30人以上、常勤介護職員の4割以上が介護福祉士の資格を有する」などの要件もある
※4…不合格者が帰国後、自費で来日し再度受験できるようにはしているが挑戦者は数名にとどまっている

(2014年3月)