介護士として定着につなげたい!

外国人留学生の受け入れ
〜加寿苑の取り組み〜

介護現場で働く外国人の受け入れルートが、今年から2つ増えました。EPA(経済連携協定)による受け入れは2008年度から実施されていますが、これに加え新設されたのが、技能実習制度によるものと留学ビザによるものです。O-ネットの活動施設のなかには、留学ビザによる受け入れを始めたところも数施設あります。そのうちの一つ、加寿苑(大阪市淀川区)で話を伺いました。

入管法改正で始まった新たな外国人介護士の受け入れ

外国人介護士受け入れの流れ

笑顔で挨拶してくれたのは、ベトナム人のドー・ティ・アンさん(23歳)とホアン・ティ・チャンさん(25歳)。午前中は淀川区内にある大阪コミュニティワーカー専門学校(以下OCWと略)で介護福祉士をめざして勉強、午後は2時〜7時頃まで加寿苑でアルバイトをしています。アンさんは2年半前、チャンさんは1年半前に留学ビザで来日。OCW入学前は福岡の日本語学校で勉強していました。

人手不足に悩む介護業界ですが、加寿苑でも数年前から新卒者の採用が難しく対策に苦慮していました。そうしたなか以前からつながりのあったOCWから受け入れの話があり、挑戦に踏み切りました。

留学ビザによる受け入れシステムは、日本語学校に留学ビザで入り、介護福祉士養成校に進めば卒業後、在留資格を「留学」から「介護」に切り替え、そのまま就労できるというもの【図参照】。昨年の入管法改正(17年9月から施行)により在留資格に新たに「介護」が設けられ可能になりました。

「送り出し国で研修を受け、介護福祉士候補者として入国し、4年のうちに合格しなければ原則帰国」というEPAによる受け入れに比べ、留学ビザによる受け入れはハードルも緩和されています。そのため就労につながりやすく、人手不足を少しでも和らげることができるではないかと期待されています。

理解力高くスタートは順調 卒業後の定着が課題

@初めてのバイト代を施設長から渡されたアンさん(左)とチャンさん(中央) A利用者にしっかり声をかけながらお茶を手渡すチャンさん Bとろみのついたお茶を用意するアンさん C専門学校で授業を受けるチャンさん(手前のポニーテール)とアンさん(斜め左)。

介護福祉士養成校の多くは2年制ですが、OCWは基本として月〜木曜の午前中のみの3年制。今年度の入学生は40名。ベトナム人33名、中国人2名、日本人5名の計40名です。教材には漢字すべてにルビを振り、講義も聴き取りやすい日本語でゆっくりと進められています。

留学生の授業料は年60万円、3年間で180万円。月々5万円を留学生が負担します。ただし受け入れ施設に卒業後就職すれば、施設が本人に年間36万円を返還、5年間で授業料全額分が返ってくるという特典を設けています。

留学生は学業を目的とするため就労は本来できませんが、入国管理局から「資格外活動許可」を受ければ週28時間を上限に労働が認められています。「施設はこの労働時間を厳守すること、またアルバイト代は施設間格差を防ぐため、どの施設も一律1100円とすること、家賃の留学生負担は2万円までとすることなどが受け入れ要件に課せられています」。桑野弘施設長はこう話します。

その他、受け入れにあたって加寿苑では、2人の住まいとしてマンション1戸を貸与。勤務日には食事も施設で提供しています。バイト代は月12万円超。授業料5万円と水光熱費を差し引いた約7万円が自由に使えるお金です。生活面での相談には生活相談員が対応するようにしています。

職員には「意識して挨拶するよう努め、自分から声をかけてあげて」「話す時はゆっくりと分かりやすく」と伝えたという施設長。「特別のことはしていません。自然体で受け入れればよいと思っています。家族や利用者にも口頭や機関紙で少し触れた程度です」

現在は配茶や洗濯物の整理、フロアの掃除、簡単な食事介助に携わっているアンさんとチャンさん。利用者と話すのは大好きなようです。「二人とも理解力が高く、仕事の呑み込みは早い。施設にも違和感なく溶け込んでくれています。そのため他の職員も利用者に集中して関われる。今後OJTを通して、徐々に身体介助にも携わってもらえれば…。介護の魅力と楽しさ・やりがいをうまく伝えていくことができればと思っています」

始まったばかりの留学生の受け入れ。専門学校卒業後も介護士として働き、定着してもらえるか…。それは受け入れ施設や専門学校だけでなく、日本の社会全体にこれから問われる課題でもあります。

中国を筆頭に、今後急速に進むと思われるアジア諸国の高齢化。外国人介護士の定着には、働きやすい仕組みと環境づくり、そして孤立を防ぐ私たち日本人の丁寧な関わりが求められます。

(2017年5月)