期待膨らむ介護機器・ロボット
普及には課題も

ライフ・イン京都の取り組み

左:移乗介助ロボットSASUKEの操作方法を学ぶ職員たち
右:床走行式リフトでベッドから車椅子へ移乗する利用者

介護職員の負担軽減や業務の効率化につなげようと、リフトなどの介護機器やロボットへの関心が高まっています。厚労省では2013年に改訂した「職場における腰痛予防対策指針」で、「原則として人力による人の抱き上げは行わせない」という新指針、「ノーリフトポリシー」を打ち出しました。また15年度補正予算により総額54億円に上る介護ロボットの導入支援事業を実施。各自治体が公募し、採択された施設には効果の報告などを条件に、1施設上限300万円までロボットの購入費用が助成されます。普及に向けての動きが期待されている介護機器・ロボットですが、実際の介護現場ではまだまだ隔たりも大きい様子。介護付有料老人ホームライフ・イン京都の取り組みを伺うとともに、課題について考えました。

かなりの時間を要する機器操作の習熟
「少人数で集中的に」が得策

ライフ・イン京都では、14年から介護機器・用具を活用したトランスファー(移乗・移動)に取り組み始めました。最初に導入したのはスライディングボード※1やスライディングシート※2。使い方の研修を繰り返し行い、ほぼ1年間で全介護職員が習得。「最近では移乗介助のためにボードを抱えて居室に向かう職員の姿を日常的に目にするようになりました」と永山恭子ケアセンター介護課長は話します。

ベッドから車椅子への移乗などに使う床走行式リフトを導入したのは15年春から※3。外部研修で短時間に使い方をマスターし利便性を実感した介護職員の小田茂樹さんが、自らが所属する介護技術向上委員会で導入を提案。同委員会や施設で検討を重ね、2台の購入に踏み切りました。

リフト使用の対象者は介護棟に入居している利用者4人。座位はできるものの立位は難しい要介護4〜5の人たちです。さっそく小田さんや若松暁美主任が中心となって、対象者の介護にあたっている職員約20人に操作方法の研修を始めました。リフトでの移動に必要な手順に従い、チェックリストを作成。職員同士が操作者・利用者役になって練習を行いました。

しかし1年経った今、使いこなせるようになったのは3人のみ。習得者が予想以上に少ないのは「研修日や研修時間がどうしても限られてくるため。慣れるまでに時間がかかる」と小田さんは話します。

習得した3人は利用者数・職員数の少ない介護棟フロアに配属されていますが、人員が少ない分、研修時にトライできる時間や回数が比較的多かったことが、迅速な習得につながったと思われます。

「少人数で集中的に研修する。その方法で習得者を増やしていく方が、広がりは結果的には早いかもしれません」

「機械だから加減が分からない」「事故が起こらないか心配」など、職員の機器への抵抗感も習得が遅れている要因の一つです。

「リフトを1人で使いこなせるようになればベッドから車椅子への移乗は3〜4分ですむ。2人で介助するためにもう一人職員を呼んできたりする手間を考えれば、リフトの方が早く対応できる。また習得した職員の中には1日の疲れが軽減したという人もいる。こうしたメリットをもっと多くの職員と共有できるようになればよいのですが…」と小田さん。「リフト使用を無理に推し進めると精神的に負担を感じる職員もいるので難しいところです」

多くの職員がリフトを使いこなせるようになるには、相当時間がかかりそうです。

販売業者の関わり方も課題
施設を訪れ使い方の研修を

介護機器やロボットの販売業者の関わり方にも検討が求められます。

ライフ・イン京都では14年末に移乗介助ロボットSASUKEも導入しました※4

しかし大型ロボットのため、8畳程度の居室ではスペースに余裕がなく、動かしにくいのが課題です。

「SASUKEの業者が施設を訪れ、操作方法を助言したり、使い勝手を聴き取ったりすることは1年近くありませんでした。またリフトについても、導入当初説明会は開催してもらったものの、その後はメンテナンスを含め、現在に至るまで業者による訪問やアフターサービスはありません」と永山さん。

開発途上の機器だけに購入者への丁寧な聴き取りは必須。操作方法の研修も、多忙な施設職員だけに任せるのではなく、販売側も担えば、習得する機会や時間数が増えると思われます。

開発・販売関係者が積極的に介護現場に関わっていくこと、そして施設もしっかり販売業者に要望を伝えること。使いやすい製品につなげていくためにも普及の鍵はそうしたやり取りの積み重ねにあると言えそうです。

※1…ベッド・車椅子間の移乗介助をスムーズにする便利な板。ボード使用の際は、高さ調節ができるベッドとアームサポートが外れる車椅子が必要。
※2…ベッド上での利用者の位置の修正や体位変換、端座位の確保、車椅子の座り直しなど楽に行える布。力任せの介助を避け、褥瘡防止にもつながる。
※3…購入価格は2台で約47万円。
※4…5年間のリース契約。リース料は約1800円/月。
(2016年5月)