オンブズマン活動から見えてくる
施設利用者の家族関係

O−ネット副代表理事、尼崎市・宝塚市家庭問題相談員
小林 和子

女性「施設のほうが気楽」、男性「妻の来訪を切望」…。

活動報告や事例集の中には、しばしば家族がらみの話がみられる。利用者の心根が垣間みえ、オンブズマンの心遣いも感じられて印象深い。

入居動機に関連する家族関係では「いいところへ行こうと言う孫について来たが、孫はいなくなった」「嫁にそこで待っていてくださいと言われたまま」など、家族に騙されて連れてこられたという事例があり、本人は納得できていない。また「本当は今すぐ帰りたい!」「“実家”へ帰りたい」など「帰りたい!!」は多くの利用者から日常的に聴く声のようだ。

「私さえ辛抱すれば息子の家族が円満になる」「病弱の妻を休養させたいので」など、前者とは違った理由での入居事例もある。また「私は帰りたいなどと思っていない」という利用者は「家で家族に気を遣わせるのが嫌」「帰ると息子の嫁に気兼ねする。ここは天国」や「食事がおいしい、困ることは何もない」と安定した心境を語っている。

施設生活の日々での家族関係では対象別に次のような事例が目立っている。

夫婦で同時入居の場合、妻は別室を希望する事例が多く「家にいた時のように使われたくない。気楽にしたいから」という。一方で、「別室では見守れなくて心配」という妻の事例もある。

妻だけの入居では、夫の来訪や食事介助、花の手入れなどを受け、喜んでいる。亡夫を誇り、楽しく思い出を語る人もあるが、「亡夫は口やかましい人だったので今は気楽、何の不足もない」や悪行を重ねた亡夫を許せず怒りを繰り返す事例もある。反対に、夫だけの入居では妻の来訪を切望したり、遠くに住む妻に朝夕電話したりして料金が大変だという例もある。

施設では意外に良い、嫁(婿)との関係。来訪に感謝。

息子との関係では、とくに母からの思いが強い。「なかなか来てくれない」「来ても5分で帰ってしまう」「来てくれないと精神的におかしくなる」などがある半面、「勝手に家を建て替えた」「家を売却した」「財産管理が不安」という例もある。一方、娘との関係では、父母ともに依存的で、来訪を待っている。認知症の人も娘の来訪で落ち着く事例もある。

孫や曾孫については無条件に出会いを喜び元気が出るという。孫の写真を飾る人が多く、「死にたい」と訴える利用者もその写真に話題を向けると笑顔になったという。

兄弟姉妹、甥姪関係でも大切に思う人が多く、来訪を心待ちにしている。

なお、嫁(婿)との関係は、施設では意外に良いと言われている。家庭内介護の辛さから開放されて優しさを示す嫁を褒め、感謝している利用者の事例も多い。

以上のように、施設利用者の家族への思いには熱いこだわりがある。それは時に秘められたり否定的だったりもする。オンブズマン活動では、利用者のこの複雑な思いを感じ取ることから利用者理解や関係充実が深まり、さらに利用者の明るい笑顔と出会う喜びにも連なることになる。

(2008年5月)