リハビリを強化し、車椅子はずしに挑む

車椅子はずしに挑むコムシェいばらき

「車椅子はずし20%」を目標に、08年度はリハビリの強化にあたってきたコムシェいばらき。1年間の取り組みを2回にわたって紹介します。

家族も練習に付き添うように

05年4月に開設した新型特養コムシェいばらき(定員70名)。入居の利用者の平均要介護度は現在3.8。開設当初に比べると、常時車椅子を使っている利用者も目立つようになりました。

「転倒の危険性があるからといって安易に車椅子に頼るのではなく、まずは転ばない身体づくりと、歩くことを手助けする介護職員の援助体制が必要ではないか」。そんな話し合いを経て、リハビリの強化を図る取り組みがスタート。理学療法士(以下、PT)も07年度は常勤1名のみでしたが、08年度は常勤2名・週4日勤務の非常勤1名の計3名に拡充しました。

「目標は車椅子はずしですが、それのみが目的ではありません。対象は入居の利用者全員。各利用者の身体面・精神面での可能性を少しでも引き出すにはどうすれば良いか、それを念頭に置いての取り組みです」とPTの一人、京藤聡弘さんは話します。

取り組みを始めるにあたって、まずはPTが利用者の身体状況を個別リハビリ時に把握。介護職員にも、個々の利用者の普段の様子についてアンケート調査と聴き取り調査を行いました。利用者・家族にも了解を得ました。

利用者からは、これまでの経験から「リハビリでひざの痛みなどがひどくなるのはイヤ」といった声が多くありました。「まずは痛みを取る。その後、徐々に痛くない運動を進めるようにしました」。家族からは「転倒、骨折して入院したら大変」「要介護度が軽くなって退所になると困る」など、最初は不満が続出。しかし、個別のメニューや目標を具体的に説明することによって、理解が得られるようになりました。

PTによるリハビリは訓練室や居室で行い、週1回、20分間の個別リハビリが基本です。その他、介護職員がレクリエーションを行ったり、日常生活の中で運動をサポート。家族も面会時にベッドからの立ち上がりやシルバーカーを押す練習に付き添うなど、協力してもらうようにしました。

「車椅子全介助」は10%減少

1年間の取り組みの結果は、次のとおりです。

日常生活における車椅子移動と歩行移動の割合は07年度が81%と19%だったのに対し、08年度は76%と24%に変化。5%の向上がみられました。

もう少し細かく移動能力の変化(表参照)をみると、車椅子移動では、全介助が07年度は全体の46%を占めていたのに対し、08年度は36%と10%減少。反対に、一部介助と自走は5%ずつ増加しました。

歩行移動では、手びき歩行が2%、U字歩行器利用と独歩が1%それぞれ減少したものの、シルバーカー利用と杖歩行は各2%増加。全体に、細かな移動能力の変化では5%以上の向上がありました。

PTと介護職員との連携がカギ

一定の成果が出た背景には、職種間の良好な連携体制も挙げられます。「経営陣やPTだけが頑張ってもダメ。やらされているのではなく、利用者にとって最適な介護援助とは何かをともに考える。ひいてはそれが介助の軽減にもつながっていく。職員の間でそんな共通認識ができたからだと思います」

利用者の状態の変化を一番把握している介護職員との連携はとくに大切です。「車椅子はずし」を目標に据えた際、「車椅子をはずせと言われても、どうすればいいのか分からない」といった声が介護職員から出ていました。また、最初は「PTに何かできるの?」といった雰囲気もありました。

そんな中でPTが努めたのは、介護現場にこまめに足を運び、話しやすい雰囲気を作ること。

「“痛いとの訴えがあるけれど”“最近調子が悪いような気がする”といった抽象的な事柄は、報告書には挙がりにくいものですが、口頭で連絡を受け、リアルタイムに対応することで早期解決につながることも多い。介護職員から発信された情報の鮮度を保ち、どう対応すればよいか、アドバイスしたり一緒に考える。そうしたことを繰り返すうちに半年ぐらいでどんどん連携が取れるようになりました」と京藤さん。非常勤PTの小浜葉月さんも利用者への対応について介護職員と交換日記を続ける中で信頼関係を深めていきました。

「車椅子はずし20%という目標値には到達できなかったけれど、手応えはつかめた。09年度は在宅復帰が可能な利用者も出ることを目標に、取り組みを進めていきます」

(2009年3月)