食事時の車椅子はずしにも挑戦

コムシェいばらき(入居70名)では「車椅子はずし」の一環として、食事の際の車椅子から椅子への移動にも取り組んできました。今回はその取り組みを紹介します。

クッションやサイドテーブルで高さ調整

車椅子はあくまでも移動手段。テーブルと車椅子の高さがアンバランスな状態で食事をすることによって、摂食・嚥下機能の低下につながる場合も少なくありません。「利用者の身体状況・嚥下能力に合った坐位について検討し、可能な利用者には椅子への移乗を促そうと考えました」とリハビリテーション課特養リーダーの理学療法士(PT)・京藤聡弘さん。

とはいえ椅子への移動は、介護職員の食事時の仕事が一つ増えることにもつながります。「すんなり合意が取れましたよ」と京藤さん。「体調改善や誤嚥防止につながり、食事介助も安心してできるようになる可能性が高いこと、“こうすれば安全に椅子に座ってもらえる”という方法を具体的に示すことによって、スムーズに取り組んでもらえました。習慣化すれば着席に1分もかかりません」

椅子は肘掛けのついているものを使用。ざぶとん・クッション・バスタオルなどで高さ調節や身体の固定を図りました。テーブルと椅子の高さ調整は、足台を置いたり、サイドテーブルを利用して対応。「テーブルの足を切ったり、新たに何かを購入したりする必要はありませんでした」

利用者の約4割が車椅子から椅子に

食事時の坐位の変化グラフ

椅子に座るのを嫌がる人には、無理に勧めません。「でも“この人はダメ”と決めつけないで、介助者を変えてみたり、別の日にまた勧めてみたりする。OKしてくださることもありますから」と、介護職員の下辻さん。「足が床や足台にちゃんとつくことによって、身体が伸びやすくなり、口へ食べ物も運びやすくなります」

食事時、椅子に座っている利用者の割合は、07年度17%でしたが08年度は56%となり、39%増加。反対に車椅子利用は07年度83%だったのが08年度は40%となり、43%減少しました。現在、椅子を使用していない人は約30名。「坐位が保てない」「嚥下能力が低下する」「足を踏ん張る力が弱く疲れやすい」「ひざに痛みがあり移乗拒否」「胃ろう、ベッド上の食事が必要」などの理由によるものです。「食事とおやつで1日4回、前後で8回立ち上がる機会がある。それを365日続けると2920回とかなりの回数になる。介護職員と連携し、日常生活を有効に活用することによりリハビリ以上に運動となり、車椅子はずしを推進できるのです」

先行投資で、特養のリハビリを推進

「特養にPTが常勤でいたら、こんなことができる。その可能性の広がりを知っていただければ」と話すのは沢田正明理事長。「PTによるリハビリが特養で普通の光景になれば、特養のあり方も変わっていくのでは…。当施設ではPT4人と柔道整復あんまマッサージ師を1人採用。コスト的には赤字でも利用者のためになり、それがあたり前の社会になってほしいから、先行投資と考えています」

これまでは病院への就職が多かったPT。「しかし、患者さんの中には後遺症をもったまま退院する人も大勢いる。在宅でリハビリを続け、改善の兆しがあらわれてきたのに、特養入居となり、リハビリを断念してしまったケースもある。そんな人たちが特養でどうしているのかを知り、治せる特養をめざしています」とPTの一人・小浜葉月さん。特養で取り組んでみたいテーマは、まだまだあるようです。

(2009年5月)