一人ひとりに適した排泄ケアを考える

光明荘の取り組み

利用者のADL(日常生活動作)の低下だけでなく、介護する側の余裕のなさもあって年々増えているおむつ着用者。そうしたなか和泉市の光明荘(入居者120人、平均要介護度4.1)では、個々の利用者にとって、できるだけ心地よい排泄環境をつくろうと試行錯誤を重ねています。取り組みのなかで利用者に笑顔が表れるとともに、職員の意識変化も見えてきました。

対象者を絞り、日中のおむつ外しに臨む

光明荘がおむつ外しを重点項目の一つに位置付けて取り組み始めたのは2013年度から。3年計画で臨むことにしました。「おむつ着用者の排泄コントロールはなかなか難しく、かつてはスキントラブルが多数発生したこともありました。それを繰り返さないためにもトイレでの排泄に力を入れようと考えました」と平井慶子副施設長は動機を語ります。

対象者を絞り、1年目は立位がとれそうな人10人の日中のおむつ外しに臨みました。10人の内訳は、要介護度3が2人、4が5人、5が3人、意思疎通可能な人が4人、難しい人が6人でした。

週1〜2回のOT(作業療法士)による機能訓練の他、ベッドから車椅子、車椅子から便器への移動時などに、立位を保つよう意識づけを図り、生活リハビリ中心で臨んでいきました。介護職員が「踏ん張って」と毎回声かけしたり、つかまり立ちの時間を徐々に延ばしていったり…。「日々の繰り返しの中で脚力も向上し、最初は2人介助が必要だった人もしばらくすると1人介助で対応できるようになりました」と話すのは吉原寿美代介護科長。

利用者に合ったトイレの手すりの高さや位置、車椅子の寄せ方、身体の支え方など、OTから助言も受けました。「“この人は脇をもって、あの人は膝折れしやすいから膝を支えて”など、個別のアドバイスが役立ちました」と光田都茂子介護主任も話します。

対象者10人のうち1人は立位が取れず断念しましたが、残る9人は取り組みを始めて3〜6ヶ月で日中のおむつ外しはずしが可能に。紙パンツとパッドで過ごすことができるようになりました。

布製パンツの使用や、排便コントロールに対応

2年目は、紙パンツになった9人の中から4人を布製の「ソ・フィットパンツ」に移行する取り組みを行いました。布パンツは通気性に優れ、肌にやさしいのが利点。上げ下げしやすく紙パンツのようなごわつき感もありません。夜間もこのパンツで過ごせる人がでてきました。

寝たきりの人の排泄ケアの見直しにも着手しました。おむつの種類、枚数、あて方、清拭のしかたなど、個々人にあった方法について検討を行いました。

3年目は排便ケアに重点を置き、下剤の調整や水分摂取量の把握に乗り出しました。下剤の使用で水様便や便失禁が頻繁にあった人が、医務と連携し下剤を調整することで排便コントロールが可能になり、ときにはトイレでの排便もできるようになりました。

新たに2人のおむつ外しにも挑戦。一人は立位がとれず断念しましたが、もう一人は日中1回程度ならトイレでの排泄が可能になりました。この2人も「ソ・フィットパンツ」に変更しましたが、かゆみがあってよくおむつをずらしたりしていた人の場合、そうした行為もおさまりました。

便失禁・パッドの減少で、介護負担や費用も軽減

排尿の計量について話し合う排泄担当職員の皆さん
布製ではき心地のよいソ・フィットパンツ
紙パッドを当てて使用する

3年間の取り組みを通して、「職員の排泄介助についての意識が向上した」と平井さん。

光明荘では取り組みにあたって京都のむつき庵で職員4人がおむつフィッターの研修を受けました。学んできた知識・技術を勉強会で全職員に伝授。「当初はこの取り組みに抵抗感が強かった職員も、おむつ外しの成功体験を持ったり、自分が携わったおむつ交換で漏れがなくなったりすると、頑張ろうという気持ちが芽生えてきました。漏れがないと、その分、介護に余裕も出てきました」

尿量を把握し、時間帯によってパッドを使い分けるなど、個々の利用者に合わせた使い方が定着することにより、消費枚数が減少し、費用の削減にもつながりました。

もちろん、利用者にも変化が表れました。おむつ外しの対象者は皆、立位に不安定さがあったため最初は怖がっていたものの、トイレで排泄できると、すっきりした表情がみられるように。「なかには排便もトイレでできるようになった人や、立位の安定・歩行能力の改善によって車椅子から歩行器使用へと変化し、言葉数も増えた人もいます」と吉原さんは話します。

一方、変化を求められるのが家族の意識。「対象者の選定にあたって、事前に家族への了解を取りましたが、“転倒事故が起こったら困る。おむつのままでよい”と断わられたご家族もあり、残念でした」

身体状況が悪化してやむを得ずおむつ使用に戻った利用者もいるものの、「外せたときの利用者と職員の喜び・共感を胸に、これからも排泄ケアに力を入れていきたい」と光田さん。今後はより多くの利用者の排泄パターンをつかみ、排泄ケアのさらなる向上をめざします。

(2016年1月)