個浴の導入で「ゆっくりお湯につかりたい」を実現

光明荘・大畑山苑の取り組み

これまで従来型施設では、大勢の利用者が大浴槽で入浴する「一般浴」と、ストレッチャーなどを用いて入浴する「機械浴」が大半でした。そうした中、利用者ニーズに配慮し、1人用の浴槽を設置して「個浴」を行う施設も出てきています。1980年開設の光明荘(和泉市)と89年開設の大畑山苑(八尾市)の取り組みを紹介します。

新型浴槽「アビット」導入

スウィング扉で湯船に入りやすい「アビット」浴槽。

光明荘(入居者120名、平均要介護度3.9)が個浴を始めたのは昨年4月から。1年半かけて施設の改修工事を実施した際、浴室も改修。大浴槽をなくし、個別浴槽「アビット」を導入しました。

「自分でお風呂に入れる人は非常に少なくなってきた。大浴槽はスロープになっているのでシャワーキャリーで湯船に入っていく際も、利用者に恐怖心を与えたり、介護職員に負担がかかったりする。安全にゆったり入浴してもらうにはどうすればよいか考えました」と浅野治子荘長は導入の動機を話します。

導入した「アビット」はリモコンの操作で浴槽の片側が扉のように開閉します。利用者は浴槽をまたぐことなく入浴が可能。「浴槽に座って、向きを変える」というシンプルな動きで入浴姿勢をキープできます。浴槽への給湯は1分弱とスピーディ。好みの湯温設定も簡単です。現在、立位が保てる入居者17名とショートステイ利用者にこの浴槽を使用しています※1。

「大浴槽の時はどうしても流れ作業的になり、“湯船にゆっくりつかりたい”という声に応えるのが難しかった。アビットでは一人ずつお湯を入れ替えるので“さら湯に入りたい”“タオルをもって入りたい”といった声にも対応。好みの入浴剤を楽しんでもらうこともできる。マンツーマン対応なので、利用者と介護職員との会話も弾みます」と吉原寿美代介護科長。

大浴槽のときは最低3人必要だった介助職員が、現在は誘導・着脱1人、入浴介助1人の2人で回せるように。「水光熱費も大浴槽にお湯を張っていたことを考えると、毎回入れ替えても経費はあまり変わらないように思います」と荘長。今後は夜間入浴も検討していくそうです。

ヒバ浴槽で木の香り楽しむ

椅子を置いて湯船につかりやすくしたヒバ浴槽。

青森の天然木・ヒバで作られた浴槽で個浴を実施しようとしているのが大畑山苑(入居者70名、平均要介護度3.7)です※2。

「利用者本位の入浴になっているのだろうか」という問題提起から、介護技術を向上させて個浴を実現しようと、2012年度から取り組みを開始。京都で「楽技介護塾」を開講している青山幸広さんの指導を受けながら職員一人で入浴介助ができる技術の習得を図りました。

木の香り漂うヒバはお湯が冷めにくく、殺菌作用もあって湿気やカビに強く腐りにくいと言われています。浴槽の大きさは長さ90㎝、幅・深さ55㎝とコンパクト。浴槽の中で体を固定できるので座位が多少不安定でも安心して入れます。湯船に入る時は、湯船と同じ高さに椅子を横に置き、そこにまずは腰をかけ、身体の向きを変えて入ります。上がるときは湯船の縁の外側にあるくぼみに手をかけると、縁が持ちやすく楽に立ち上がれます。

軽量で移動も容易なヒバ浴槽。13年度は大浴槽のある浴室の一角に置いて試験的に使用してきましたが、3月に下の階にある小型の一般浴室を改修。14年度からはそこに浴槽を移して本格的に利用していく予定です。「最初は利用者の1割、7人程度を対象に始めていきたい」と大田忠志施設長。個浴導入の目的は、気持ちよく入浴してもらうことで「利用者の笑顔が見られたら」ということ。「個浴が“寄り添う介護”のきっかけになればと思っています」

個人浴槽を導入しても大浴槽は残した大畑山苑。「利用者の中には大きなお風呂が好きな人もいる。選択肢を設けることも利用者サービスの一環につながると考えています」

※1…機械浴は103人(座位浴73人、寝位浴30人)。※2…機械浴は53人(座位浴38人、寝位浴15人)、一般浴17人
(2014年3月)