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手作りビデオで危険予知力を高める

食事・入浴・排泄・移動などの介護場面を表したイラストから、状況を読み取って危険な点を見つけ出し、対策を話し合うことを通して危険を予知する力を養う「危険予知トレーニング」(以下、KYT)。もともとは工場や工事現場に携わる従業員向けの研修でしたが介護版も開発され、研修を導入する施設が増えています。にしのみや聖徳園もそんな施設の一つ。とくに入浴については3年前に手作りのビデオ教材を作成。KYTに役立てています。

きっかけは入浴事故から

浴室で車椅子のブレーキをかけ忘れる。温度計や手で湯温を確認しないまま利用者を湯船につからせる。座位姿勢を整えないままリフトを動かす…。事故につながる危険のある場面をふんだんにビデオに盛り込んだ、にしのみや聖徳園のKYT教材。所要時間は約15分。リフト浴・一般浴・ストレッチャー浴において、それぞれ悪い例・良い例を収録しています。

企画・実演はリーダー4人と主任の計5人。撮影は主任生活相談員の稲垣渉さんが担当。盛り込むべき場面や構成を決め、仕事が終わった夜の9時から、3時間かけて収録しました。

オリジナル教材を作ったのは、3年前入浴事故が起こったため。湯船につかっていた利用者が体勢を崩して大量にお湯を飲み、病院へ救急搬送されたのです。職員が脱衣場へ行って目を離した数秒間の出来事でした。幸い利用者は快復し、退院後再び施設で暮らすようになりました。しかし、この事故から「介助時は1秒たりとも目を離さない」「現場を離れるときは必ず別の職員がつく」という鉄則は、担当職員も他の職員も、日常的に守っていなかったことが判明したのです。

施設では、手順書を見直し、入浴介助に入る前には必ず注意事項を唱和することを徹底。また職員配置を見直し、必要時にサポートできる職員を増やすようにしました。「研修も、これまでイラストで行っていたKYTをもっとリアルなものにし、臨場感あふれる映像を通して職員の危険予知力を高めようと考えました」と稲垣さんは話します。

グループワークで視野広げる

出来上がった教材は、新人研修の他、毎年秋に開く全職員対象の研修にも活用。日々の対応を改めて見直す機会としています。自施設の浴室が舞台だけに、職員も具体的に危険な場面をイメージしやすい様子。急に立ち上がったり、滑りそうになったり…といった利用者の予期せぬ動きも映像化したことで、文章や口頭での説明以上に印象に残り、予測も事前の対策も立てやすくなったようです。

研修では、各自が危険な場面と予想される事故を考える他、グループワークを通して他の職員が気づいた「危険」にも耳を傾けます。「自分には気づけなかった危険を知ること、皆で対応策を考えることを通して視野も広がります」ビデオを通し、危険予知だけでなく、利用者への声のかけ方や対応のしかたなど、接遇面での学びにもつながっている様子。「ドアの開閉が乱暴」など、雑な対応がケガの要因となることにも気づきは広がっていきます。

3年前の入浴事故を教訓に、油断を廃し、危険を予測する力をもつよう努めてきた同施設。その取り組みはこれからも続きます。

ストレッチャー浴の場面を見て、危険要因と想定される事故を考える職員たち
(2012年3月)