施設周辺を散歩
〜歩数を地図に反映〜

施設にとって外出はなかなか難しいようですが、力を入れているところもあります。参考になる点が多い「にしのみや聖徳園」の外出支援を2回にわたって紹介します。

重度の利用者にも刺激を

「外気に触れることが少ない利用者に、時間や費用のかからない施設周辺への外出を実施してほしい」。長年オンブズマンは多くの施設でそう提案してきました。

にしのみや聖徳園では、入居者70名(ショート含む)を4グループに分けてケアしていますが、Bグループで昨秋取り組んだのが「お散歩倶楽部」。利用者1名を職員1名が介助し、10分程度の散歩の機会を順番に提供しようというものです。「8月13日〜10月31日の期間に、天気と利用者の状態を見ながら24回実施しました」と稲垣渉主任生活相談員は話します。

Bグループの利用者は19名。要介護度は4.1前後で重度で認知症の方も多く、離床が食事のみの人が6名、食事も居室でとる人が2名、他の11名を含め全員がリクライニングカーや車椅子を利用しています。「短時間でも外気に触れ、いい意味での刺激になれば」とグループリーダーが取り組みを発案。近畿老人福祉施設協議会の研究大会で他施設の発表からヒントを得たそうです。

早出の業務終了時に実施

散歩時の写真と歩数が地図の横に

1回あたりの歩数の目安は700歩。毎回、
散歩時の写真と歩数が地図の横に掲示された。

散歩は、利用者・職員が無理なく安全に取り組めるよう、3つの工夫を行いました。

第1に、時間帯の工夫。散歩はグループに5名いる常勤職員が交替で担当。早出の職員が、自分の業務・引継ぎが終わる夕方4時半ごろに対応することとしました。「施設生活の中では比較的落ち着いた時間帯。業務に支障を与えることなく利用者に向き合えます」

第2に、どれだけ歩いたかを目で見て楽しめる工夫。グループでは日本地図をフロアに貼り出しました。散歩の際、職員は万歩計を携帯。100歩を1cmに換算し、毎回、地図にラインを引いて、それをつないでいきました。

地図上の1cmは実際の20kmに相当。稚内を出発して日本海沿いを通り、最終的には鹿児島まで到達しました。地図の周囲には散歩時の写真も掲載。「日本一周は無理でしたが、ともに楽しめるきっかけづくりにはなりました」

第3に、安全性への配慮。出発前に看護師が利用者の体調を確認。「日よけが必要」「下剤を飲んでいるので今日は避けて」など看護師から助言があることも。職員は必ず携帯電話を持参しましたが、散歩中に急変したり、帰ってから体調を崩したりといったトラブルとも無縁でした。

関わりも広がり深まる

散歩はさまざまな好結果を生み出しました。短距離・短時間のため利用者は夜間に興奮が出ることもなく、適度な疲れでよく眠れたようです。

施設周辺には公園や小学校、稲穂が揺れる田んぼ、イチジク畑などが点在。仁川沿いにそぞろ歩きも楽しめます。秋空を眺めたり昔話に耳を傾けたりする恷兜漲揩フひとときとなりました。利用者の8〜9割に素敵な表情が見られ、職員もリフレッシュ。「介護の原点に返り、新たなエネルギーにつながりました。途中で、小学生や乳幼児をつれた母親、犬を散歩させている人などから声をかけられ、ふれあいが生まれることも。車での外出時にはみられない光景です」

リクライニングカーに乗った利用者を含め、19名全員に外出機会を提供できたことは職員の自信にもなりました。

Bグループの取り組みはグループ替えのため昨年で終了しました。そのノウハウを生かして今年度はCグループが「兵庫県一周」を目標に9月から取り組みを開始。22名が散歩を楽しんでいます。

(2009年9月)