“リスク”よりも“効果”大
〜13年間外出支援を継続〜

にしのみや聖徳園では、前号で掲載した「お散歩倶楽部」以外にも、以前からさまざまな外出支援を展開してきました。今回はその取り組み内容と考え方を紹介します。

普段はスプーンできざみ食を食べている人が外では箸を使うことも

年間の総外出回数は247回

1996年の開設当初から外出には力を入れてきたにしのみや聖徳園(70名/入居57名、ショートステイ13名)。「何かと制約のある特養の生活において、外出に力を入れることが施設の特徴になると考えました」と主任生活相談員の稲垣渉さんは話します。「外出は、リスクより効果の方が大きい。外気に触れることで、利用者の表情や身体がシャッキリするのがよく分かる。普段はスプーンできざみ食を食べている人が、外では箸を使って松花堂弁当を食べることもある。気持ちの張りが自身の力をアップさせます」

年間の外出メニューは、表のとおり。初詣や花見は入居者57名中、毎年40名以上が参加。秋の散策もドクターストップがかかった人や希望しない人を除き、30名以上が参加します。「秋の散策は、海遊館・太秦映画村・植物園など8か所ほど行き先を用意し、各自に選んでもらい、少人数で実施します。ニーズを調べ、毎年行き先は少しずつ変えています。以前は団体で出かけていましたが、重度の人の場合、昼食までに疲れてしまうこともある。本当に楽しんでもらうには行き先や時間配分を考慮した選択肢が必要だと考えました」

他に個別外出として、甲子園球場でのナイター観戦、居酒屋ツアー(3か月に1回)、外食、映画鑑賞や観劇、百貨店での買い物、花火大会などにも対応。昨年の実績では、年間の総外出回数は247回(お散歩倶楽部除く)、1人あたりの平均回数は4.33回、最もよく出かける人の外出回数は10回に上っています。

介護以外の職員もサポート

1回の外出で介助する利用者は多くても4名程度。ほぼ1対1で職員が対応します。職員の勤務予定や利用者の身体状況を考慮し、介護職員や生活相談員の他、栄養士・看護師も介助にあたります。同施設の利用者数:介護・看護職員数の比率は2.5:1。他施設より手厚いというわけではありませんが、限られた人員の中で介護以外の職員もサポートできることが、外出支援のカギと言えます。

家族を介助要員とは考えていないのも同施設の特徴。「外出はあくまでも施設の取り組みであり、利用者と職員の交流の場。その機会を有効に活かしたいと考えています。初詣や花見に家族が参加される場合は現地集合でお願いしています」

外出に伴う費用のうち、入場料や昼食代実費は利用者負担。施設の車で行く場合のガソリン代は施設が負担。同行職員については、1000円までは施設、それを超える分は職員の自己負担となっています。

外出に備え、日頃から体操

外出支援が続いているのは3つの要因があるようです。第1は施設が好立地にあること。「甲子園球場へも車で30分で行ける。外出しやすい環境にあるのは確かです」。第2に理事長はじめトップのバックアップがあること。第3に主任やリーダーを中心に介護職員が外出の良さを理解していること。「利用者の素敵な笑顔を見ると“また実施したい”と思うようになります」

重度の利用者の外出には、「道中で急変したら大変」と心配する施設も多いようですが、「施設内なら急変しない」とは言えません。13年間の外出で救急車を呼んだのは1回だけ。それよりも、行き先とタイミングの見極めが重要です。「離床時間や坐位を保つ時間を少しずつでも延ばすなど、日常生活の中で準備しておくことも大切です。当施設では毎朝、ホールや庭で外気浴・体操や歌などをして体力作りにも努めています」

(2009年11月)