嚥下体操の継続で誤嚥を防止

成法苑の取り組み

食事前に口やのどの周りの筋肉や舌を動かすことによって飲み込みをよくし、誤嚥防止に役立つと言われている口腔(嚥下)体操。活動施設でも06年頃から始めるところが増えましたが、継続し習慣化するのはなかなか難しいようです。そうした中、工夫を凝らし、2011年10月から継続した取り組みを行っているのが八尾市の成法苑(入居者50名、平均要介護度4.1)です。年間の誤嚥性肺炎発症件数も大幅に減少した同施設の取り組みを紹介します。

口腔体操をDVDで分かりやすく

まずは深呼吸、続いて前から後ろに肩を回して上体をリラックスさせる。次にほほをマッサージして噛むための筋肉をやわらげる―。

成法苑の手作りビデオ「口腔エクササイズ」の一場面。肩・首・口の運動、唾液腺のマッサージなどで構成され、所要時間は約5分。体操前には姿勢の注意点、体操後には舌の動きをよくするための発語練習も盛り込まれています。

舌の動きをよくする「パ・タ・カ・ラ」などの発語練習はやっていたものの、実施が断続的だったという同施設。食事中むせたりする利用者もみられるなか、課題を克服するために行ったのが次の2点です。

一つは、DVDによる口腔体操の視覚化。「文書や口頭による伝達だけだと職員によって取り組み方にバラツキが出る。すぐにやり方が分かるように、テロップで動きやその目的を説明し、利用者も職員も簡単に取り組めるようにしました」と、企画と推進にあたった生活相談員の小山隆博さんと介護職員の村上知帆さんは話します。DVD制作にあたっては非常勤の理学療法士や言語聴覚士にも相談。理学療法士が体操の展開案を作り、言語聴覚士からは「発語練習を必ず入れるように」との助言を受けたそうです。

もう一つは、実施表による職員への意識づけ。30人の利用者が集まる4階の食堂では、習慣化するために実施表を貼り出し、昼食・夕食ごとに○×を記入してもらうようにしました。4階以外で食事を摂る個別対応が必要な利用者20人については、個々に対応の有無を記入。「開始当初は“食堂への誘導が遅くなった”“業務が忙しかった”“突発的なことがあった”などで実施されない日もありましたが、3か月ぐらい経つと昼食前は必ず行われるようになりました」と村上さんは話します。

口腔評価で成果と手ごたえを共有

開始から半年後の12年4月には職員にアンケートを実施。声を反映し「口腔体操を業務に組み込み、マニュアル化する」「食堂への誘導を15分早める」ことにより、確実な実施へとつなげました。また「体操のテンポが速い」という声を受けてDVDを修正。氷川きよし・美空ひばり・CMソングとBGMも3パターン設け、利用者のリクエストや雰囲気によって選択できる工夫も行いました。

「利用者にとって口腔体操は刺激となり、楽しみの一つにもなっている。職員も嚥下に関心を持ち、話し合う機会が増えてきたように思います」

施設では、対象者を5名に絞り、発音測定と反復唾液嚥下テスト(図表参照)を実施。1年半の変化をみてきました。「初回に比べ開始3ヶ月後の2回目は大幅に向上。その1年後に実施した3回目では機能が維持できていることが分かりました」と小山さん。誤嚥性肺炎の発生件数も11年は12名、12年は3名と大幅に減少しました。

口腔体操の実施のほか、昨年度から口腔機能維持管理体制加算※1と口腔機能維持管理加算※2を導入し、口腔ケアにも力を入れている同施設。今後は車椅子から椅子への移動など食事時の姿勢や、食事形態の見直しにも力を入れていきます。

DVDを見ながら口腔体操を行う利用者のみなさん
反復唾液嚥下テスト
生つばを30秒間に飲み込む回数を測定。初回(11年12月)に比べ、2回目(12年1月)は向上、3回目(13年1月)は維持しているのが分かる。
※1…施設が作成した「口腔ケア・マネジメント計画書」に基づき、歯科医の指示を受けた歯科衛生士または歯科医が、介護職員に口腔ケアに関する技術的助言や指導を月1回以上行っている場合に給付される加算。各利用者に月30単位加算される。
※2…歯科医の指示を受けた歯科衛生士が、利用者に対し月4回以上口腔ケアを行った場合に給付される加算。当該利用者ごとに月110単位加算される。ただし口腔機能維持管理体制加算を取っていないと算定されない。
(2013年5月)