市民講座開講

『認知症への理解を深める』

平成25年度大阪市NPO・市民活動企画助成事業

「知っておきたい認知症の知識」で、講師・藤本委扶子さんの話に耳を傾ける参加者の皆さん。

O-ネットでは1月17日・21日・24日の3日間、市民向け連続講座『認知症への理解を深める』を開きました。この講座は大阪市教育振興公社の助成を受け、大阪市NPO・市民活動企画助成事業の一環として行った取り組みです。昨年12月に読売新聞で紹介されたこともあり、申込が殺到。昨年末で受け付けを終了するほどの盛況ぶりでした。

大阪市NPO・市民活動企画助成事業は、市民主体の学習活動を進めるため、市民グループやNPOが企画する学習講座を支援し、地域の教育力を高めようというもの。昨年までは「大阪市生涯学習ネットワーク事業」の名称で実施され、O-ネットも21・22・24年度に助成を受けた実績があります。

今回の連続講座『認知症への理解を深める』は、家族や知り合いなど身近な人々の中にも増えている認知症について、必要な知識を持ち、適切な対応のしかたを学ぶことによって、認知症の人が安心して暮らせる生活とまちづくりにつなげていくことができれば…と企画。O-ネットが築いてきた人的ネットワークを活かし、認知症ケアの専門家や施設関係者に講師を依頼しました。

昨年発表された厚労省研究班の調査によると、「65歳以上の高齢者のうち認知症の人は推計15%、2012年時点で462万人に上る」とか。認知症になる可能性がある軽度認知障害(MCI)の高齢者も約400万人いると言われ、「65歳以上の4人に1人が認知症とその“予備軍”」と推計されています。

認知症を理解し、家族や市民ができることを探る

講師を務めた、和崎光子さん(上)、畑八重子さん(中央)、福留千佳さん(下)

1日目の講義「知っておきたい認知症の知識」では、介護支援専門員や認知症ケア専門士の資格を持ち、認知症サポーター養成講座の講師(キャラバン・メイト)も務める藤本委扶子(いほこ)さんが講師を担当。介護支援専門員として接してきた利用者の方々や自分の母親の例も交えながら、「認知症とは何か」について分かりやすく解説しました。

講義では、アルツハイマー型・脳血管性・レビー小体型・前頭側頭型認知症の4タイプの特徴について具体的に言及。認知症の人や家族の気持ちを理解することの大切さも強調しました。「暴言・暴力、介護拒否などの周辺症状にも、認知症の人なりの理由がある。まずは受け止め、行動や言葉に隠された本当の思いを知ろうと努めることが大切」「介護者や家族もストレスがたまる。知り合いなど周囲の人が“お茶飲みにおいで”といつも声をかけてあげることが支えになります」と話しました。

2日目は「身近な人が認知症になったとき」と題し、実父を11年間介護した和崎光子さんが、家族の立場から講師を務めました。大阪市認知症介護実務者研修で体験談を話したこともある和崎さん。「本当は認知症になってほしくなかった。介護もしたくなかった。でも逃げたらきっと後悔すると思った」と本音を吐露します。「父は比較的早い時期に認知症専門医を受診。“安心の感じられる介護があれば自分らしく生きていける。介護サービスを利用し、介護者も心身に余裕をもって対応することと、病気への理解と介護の工夫が大切”とアドバイスを受けたことがよい結果につながった」と振り返ります。

専門医の診断から3年後、父は有料老人ホームに入居。認知症を理解した対応ではなかったためグループホームに転居。グループホームでは施設長と長時間話し合い、「職員さんは父の言葉にしっかりと耳を傾けてほしい」と要望。「不安で自信のない父が尋ねていること・確かめていることにすぐに返答してほしい。“大丈夫”ではなく具体的な回答で安心させるようにしてほしいと伝えました」

真摯な対応で表情も穏やかになった父でしたが、「自分は役に立たない人間だ」と嘆くことも。「“不安な中でも頑張っているお父さんは偉い”と伝えることで安堵の表情がみられた。否定や無視されず、心がつぶされなければ穏やかに暮らせることを実感した」と結びました。

3日目は「地域の拠点として〜認知症の人が安心して暮らせるまちづくり&施設介護」。社会福祉法人ライフサポート協会なごみ施設長の福留千佳さんと、社会福祉法人みささぎ会認知症予防自立支援プロジェクト推進室長の畑八重子さんが、実践者の立場から講義を展開しました。

福留さんは、ライフサポート協会が運営する、小規模多機能型居宅介護事業所「きずな」と、障がい者と高齢者の複合型事業所・グループホーム「大領地域の家であい」の取り組みを通して、「地域とは何か」に言及。「きずな」ではカレーうどんや料理教室などを通じて地域住民とのつながりを育み、認知症サポーター養成講座を通して認知症への理解を図っていることを紹介しました。一方、「であい」では、建設にあたり反対運動があったと述べ、「“お互いさま”の関係づくりまでには時間がかかる」と地域づくりの難しさも話しました。

畑さんは、みささぎ会が06年より認知症研究チームを立ち上げ、地域への出前教室や施設介護に取り組んできたことを紹介。施設ではデイサービスを中心に「潤脳チャレンジ」という学習活動と体操を組み込んだ認知症プログラムを導入し、一定の成果を上げていると話しました。グループホームの利用者の変化を記録したDVDも上映。「職員は利用者のできること・できないことを見極め、やる気を引出すことが大切。わかりやすく表示するなど環境を整えることも必要です」。

認知症の人との対応で家族や周囲の人が配慮したいのは「子ども扱いや“訓練”しないこと」と畑さん。「地域のことに関心を持ち、困っている人がいたら声をかけてみる。そこから認知症の人が安心して暮らせるまちづくりが始まる」と結びました。

毎回、2時間の講義でしたが、熱心な参加者が多く3回連続受講者は73人。豊富な体験を通した具体的な講師の話に手ごたえも上々でした。

(2014年3月)