連続講座を開催

特養で安心して暮らすために

ユーモアを交えて特養の特徴を話す福森潔・寿光園施設長

O-ネットでは12月12日・16日・19日の3日間、府民向け連続講座『特別養護老人ホームで安心して暮らすために〜知っておきたい基礎知識〜』を大阪市中央区のドーンセンターで開きました。大阪府福祉基金地域振興助成金を受けて開催。費用や介護内容、認知症への対応など、特養利用の際に役立つ知識・情報を提供し、一般の人々の理解を進めるとともに、積極的な取り組みも紹介し良質の施設介護が進む一つのヒントになればと考えました。寒波の影響もあり、参加者は3日間で延べ78人にとどまりました。

1日目「特養の概要を知る」

特養の施設長2人から話を伺いました。

最初に、高齢者施設における特養の位置づけと特徴について福森潔・寿光園施設長が講演。有料老人ホームやサ高住、ケアハウス、グループホームと特養の違いについて説明がありました。

「各自の家庭が異なるように、特養も環境や雰囲気は個々に異なる。どういうところを選ぶのか、見学して自分の目で確かめることが大切」と福森さん。「特養というと待機者が多いというイメージがあるが、複数の施設に申し込みをしているので実数は3分の1程度。電話で待機順位や実数を確認することもできる。有料老人ホームや老健、サ高住に入居しつつ、特養に入るために順番を待っている人も多い」と話しました。

続いて、桑野弘・加寿苑施設長が、従来型・個室ユニット型(新型)・地域密着型の特養の種類と入居費用について説明。利用料金の内訳はもちろん、市民税非課税世帯の利用者等に適用される「高額介護サービス費」(介護保険1割負担額を軽減)、「特定入所者介護サービス費」(食費・居住費を軽減)、「社会福祉法人等による利用者負担軽減制度」※についても情報提供がありました。

また、15年度からの介護保険の変更点にも言及。低所得者の保険料軽減を拡充する一方、15年8月から高所得者の保険料の2割負担や、食費・居住費の軽減対象に資産要件が加味されることについて説明がありました。

※社会福祉法人と市町村が協力し、生計困難な利用者の介護保険1割負担、食費・居住費の一部を負担する制度。

2日目「認知症介護実践例とポイント」

阪大医学部とも連携しながら認知症ケアに先進的に取り組んでいる社会福祉法人みささぎ会の畑八重子・認知症予防自立支援プロジェクト推進室長が講演しました。

特養利用者の場合、8割以上が認知症で、中程度から重度の人が多くを占めています。こうした人々に対するケアの基本は、日々の生活を毎日同じような流れの中で、穏やかにゆったりと過ごすこと。「些細なことでも混乱されるので居室・フロアなどの環境はできるだけ変えないほうが良い。体調変化も起こりやすく、体調不良が混乱を招くことも多い。便秘が続いていないか、睡眠はとれているか、脱水や発熱はないかなど、健康状態の観察と配慮をしっかり行うことが第1に求められます」

第2に大切なのは身体機能を維持すること。「アクティビティを取り入れ、聴覚・嗅覚など五感を刺激する取り組みも求められる。土いじり、小物づくり、漬物づくりなど、昔やっていたことを生活の中に取り入れ、できることをしてもらう。テーブルを拭く、箸を配るなど役割をもってもらう。こうしたことを通していきいきと主体的に動く人も少なくありません」

第3に、適切な生活行為のサポート。「衣類をたたむなど、生活行為の中で何ができて何ができないのかを見極める。そして、できることは職員が見守り、手を出しすぎないようにして、利用者に日々続けてもらう。そうしたことが自信の維持につながります」

第4に、職員が目線を合わせ、利用者の話を笑顔で聴くこと。「肩を並べて寄り添うのもいい。そんなゆったりしたひとときを持つことから、利用者の思いや要望を聴けるかもしれません」

第5に、こまめに家族に近況報告を行うこと。「利用者のちょっとしたエピソードも伝え、家族と共有する。そうしたことがひいては利用者の心の安定にもつながります」

畑さんは系列施設の「褥瘡をつくらない介護」と食事のエプロンはずしの実践例も紹介。

「こうした取り組みが利用者の尊厳について考え、身体状況の把握と工夫につながりました。また、身体を動かすアクティビティの大切さも実感しました」

重度になると利用者自らが要望を発信することも極めて少なくなります。それだけに、主訴を尊重したケアの実践が求められます。「ある利用者が亡くなる2か月前、トイレに行きたいとの訴えがふっとあり、座位が難しかったがストレッチャーでお連れしたところ“ありがとう”と言われた。主訴に応えていくことが認知症ケアの極意だと思います」

認知症ケア施設見学時のポイント
  1. 飛び込みの見学もOKか
  2. 利用者の表情が明るく、衣服もきちんとしているか
  3. 職員が利用者と目線を合わせて言葉かけをしているか
  4. 居室には利用者のなじみのモノが置かれているか
  5. オンブズマンのような第三者を導入したり第三者評価を積極的に受審したりしているか

3日目「特養の生活と介護」

磯崎清さん・川上正子さん・後藤田慶子さん・中村紀子さんのオンブズマン4人が講師を担当。特養の生活から10項目をピックアップし、オンブズマン活動から見えてきたことについて語りました。

特養の1日の流れと食事について説明した後藤田さんは「食事時の姿勢への配慮も大切で、テーブルと椅子の高さが適切かといったことが誤嚥防止に役立つ」、楽しみ・外出を担当した磯崎さんは「重度化する中、動きは少なくても利用者がゆったりと触れ合う時間をもつ取り組みが求められる」と話しました。

医療・リハビリ・車椅子を担当した中村さんは「利用者の大半が車椅子を使っている。施設・職員が車椅子や車椅子の座位姿勢に注意を向けることが生活の質向上につながる」、入浴・排泄・苦情相談を説明した川上さんは「身体状況を考慮し、入浴や排泄にリフトなどの機器を上手に活用することも一つの方法」と語りました。