利用者の主体性を奪わないために

〜自立支援の考え方と進め方〜

第42回O-ネットセミナー

講演する明石陽子ライフ・イン京都ホーム長。

O-ネットでは2月22日(土)、第42回O-ネットセミナーを開きました。「利用者の主体性を奪わないために〜自立支援の考え方と進め方〜」と題し、介護付有料老人ホームライフ・イン京都の明石陽子ホーム長が講演。入居費用や職員数、利用者の背景などに特養とは違いはあるものの、自立支援の取り組み内容には参考になる点も多いだけに、参加者74人が熱心に耳を傾けました。

1986年11月の開設以来、「自立支援と生きがい」を基本理念に掲げ、取り組んできたライフ・イン京都。元気なうちから暮らせる一般居室の入居一時金は2160万円〜5200万円と有料老人ホームのなかでもハイクラスの施設です。職員数は常勤換算で131人。入居者数は303人で、そのうち介護が必要な人は143人。一般居室(32〜85㎡)に69人(要支援1〜要介護5、平均要介護度1.6)、介護居室(17〜21㎡)に74人(要介護1〜5、平均要介護度3.5)が暮らしています。

自立支援のための組織作りで重要な役割を果たしているのが「生活支援相談室」。社会福祉士・精神保健福祉士・心理カウンセラーなどを配し、介護や健康の不安、確定申告、病院や外出の付添まで、幅広い相談や困りごとに対応しています。「ルーチンワークを持たず、専門知識を活かして迅速に対応するのがこの部署の特徴です」と明石ホーム長。

生活相談室を中心に看護・介護・管財など各部門が連携し、常に利用者情報を共有する体制を整えているのも同施設の特徴。「会議などさまざまな話し合いの場で職員間の考え方をすり合わせ、パソコンソフトも活用しながら必要と思われる情報を聴取。“いつもと違う”をいち早く見つけ、適切な援助につなげています」

こうした体制とともに、利用者対応で基本としているのが「すぐに駆けつけて安心してもらう」「心と体に寄り添い、真摯な姿勢で向き合う」「冷静な判断で手の出し過ぎを避ける」ということ。アクティビティなどの催しや安心できる居場所を提供する他、職員自身も話題の引き出しを増やし、ニーズの把握に努めています。

明石さんは自立支援の実践例として6つの事例を紹介。82歳・要介護5の女性(バルン留置、胃がん、腸閉塞、腸瘻造設)のケースでは、居室にこもりがちで入浴も拒否。洗面所で洗髪・清拭を行う状態でしたが、「細かな手作業は好き」とのことから「できることはないか」と職員が検討。大人の塗り絵を提供したところ楽しんで取り組むように。色彩感覚が素晴らしく、デイルームで毎日取り組むようになって生活意欲も増し、入浴も久々に月1回から週2回へと変化したそうです。

自立支援にはリスク管理も欠かせません。同施設でも「転倒」「食品管理や衛生管理・室温調整ができない」「外出先でのトラブル」などが発生することも。玄関もオープンで自由度が高いだけに認知症の人の迷い出しもあります。「行動を制限すると、隠れて外出したりケガや病気を隠したりしてかえって危険が増す。“危ないから禁止”ではなく代替案や実施のための対応策を考える。室内での事故に迅速に対応できるようにナースコールを延長したりペンダント型コールにしたり…。外出時には連絡カードを携帯してもらうなど、個々の課題にその都度向き合い、利用者の主体性を尊重しながら対応しています」

事故やリスクをできる限り防ぐには、地域・警察・病院等とのネットワーク、親族との協力体制を日頃から密にしておくことが不可欠。GPSやドアセンサーなどの電子機器も有効に活用しています。

いずれにしても、自立支援において認知症の進んだ利用者の自己決定をどう考えるかは最大の課題。「行為の自立」だけでなく「決定の自立」もままならない状態にあって、本人に嫌がられないよう気持ちを尊重しつつ、適切な支援を行うという、そのバランスをどうとるか…。介護のプロとして、事業者や介護職員に求められる、これからの大きなテーマであると言えます。