誇りをもって働き続けられる施設をめざして

6月26日/ドーンセンター

団塊の世代が75歳以上となる2025年には250万人もの担い手が必要になると試算されている介護の現場。しかし、若年労働者の減少や認知症ケアの難しさなどもあり、職員の確保と定着には頭を悩ませている施設が少なくありません。第51回O-ネットセミナーではこの課題に踏み込み、社会福祉法人隆生福祉会の加藤正人・管理統括部統括部長に同法人の介護人材の確保と定着策について話を伺いました。参加者は55名でした。

遊び心あるネーミングでヤル気促す

法人の取り組みを話す加藤統括部長。隆生福祉会は2002年創立。特養2か所の他、グループホーム・デイサービスセンター・保育園など18事業を展開。契約・パートを含む職員数は387人。

一億総活躍社会に向けて、介護施設や保育園が必要とされていますが、建物はできても職員確保が難しいのが現状です。「求人広告を出しても電話が鳴らない、就職フェアでブースを出しても人が来ない、高額な派遣会社や人材紹介会社に頼らなければならない…。介護業界ではそんな状況が続いている」と加藤さん。

現場においても、職員配置にゆとりがない、適性のない職員が他の職員の足を引っ張る、要求が過剰なモンスターファミリーの出現などで、職員は疲弊しています。マスコミの3Kや虐待事件の過剰な報道も、業界離れを加速させる要因になっています。

そうしたなか、隆生福祉会が10年前より打ち出したのが新卒採用路線です。「中途採用者の在職率は概して低く10〜20%程度。多少時間はかかっても丁寧に新人を育て法人理念や仕事への共通理解を培っていくほうが結果的には定着率や仕事の質向上につながると考えました」

欠員が出たときは派遣でつなぎ、新年度に補充する方法等で進めた結果、10年間の平均離職率は32.5%に。とくに2013年度〜15年度採用においては14.4%という低い離職率をキープしています。介護労働安定センターの調査によると、1年間の離職者のうち73.2%が勤続年数3年未満の職員。このことを考えると、同法人の離職率がいかに低いかが分かります。

働きやすい環境を整えるため、研修・休暇・労働環境の工夫も行われています。

「研修体制ではキャリアアップシステムの他、育成システム“ゆめユニバーシティ”で新人・2年目・3年目研修やリーダー研修を実施。認知症・口腔ケアなどの職能研修や教養研修も開講。多くの職員が参加しています」

働きやすさを高めるため、チーフ以下の介護職員はノー残業を基本に。「休暇制度では誕生日休暇やリフレッシュ休暇で、有休の公平で計画的な取得を促進。子育て等で短時間しか勤務できない職員のために短時間正職員制度も導入しています。また介護面ではスライディングボードの活用や、リフト・フルリクライニング車椅子ベッド・歩行補助機器、スタンディングデスクなどの導入を進め、職員の腰痛予防、介護の負担軽減に努めています」

法人では、組織の活力と団結力を強める取り組みも行っています。その一つが「ゆめリンピック」の開催。介護技術の向上を競う「ケアテク」、整理整頓など職場改善の取り組みを競う「8S」、利用者に感動を届ける企画を競う「感Do!」の3種目を実施しています。その他、クラブ活動「ゆめサークル」も展開。マラソン・卓球・フットサルなど17以上のサークルがあり、仲間意識の強化に役立っています。

一方、職員の意識向上につながっているのが09年から始まったフィンランドとの交流です。「互いの良いところを学び合おうと、視察やセミナー、介護施設での体験実習などを展開。これまでに法人からの派遣人員は71人、フィンランドからの受け入れ人員は99人に上っています」

法人の基本理念は「利用者・家族・地域・職員・法人の5つの笑顔」。「ゆめ」というキーワードをもとに、働きやすい職場づくりをめざし、遊び心を加えたネーミングや趣向で若い職員のヤル気を促している同法人。「職員の確保・定着の鍵となるのは、職員がいきいきしていること。給与だけではない。後輩が先輩に憧れる。見学者がここで働きたいと思う。家族がここに親族を入れたいと思う。利用者の笑顔に出会える。そんな施設・職場にすることが何よりも大切だと思うのです」

※平成24年度・25年度介護労働実態調査